消え行く心の故郷 | 蛾衣の京劇衣箱

消え行く心の故郷

2年前、初めて北京を訪れ憧れの劇装街に足を踏み入れた。そこは車の行き交う通りから横に入る薄汚れた路地。洗濯物がぶら下がり練炭を積んだリヤカーを引いた自転車や小型バイクがすれ違う何故か懐かしい巾3mに満たない路地。そこに京劇の衣装や小道具、大道具を扱う店が左右に雑然と並んでいた。


どの店も私の大好きなものばかりで会話が出来るなら一日中居ても退屈しない通り。あれから2年、訪れる度に雰囲気が変りホテルが忽然と現れたり公衆トイレが綺麗な外観になったりと変化していた路地。今年の2月に行くとお店の人が「6月には移転する」と言った。どうやら国の政策だかで立ち退きするらしい。もしかするとオリンピックが関係してるのかな?


確かに現状の交通事情ではオリンピックどころじゃない。交通渋滞が酷く移動時間が読めないのだ。これが3年後?ならもっと酷くなるだろう。2年前より確実に悪化してるのが体感できるのだから。劇迷には関係ない?と思ってたけど結構影響がある。


まず、衣装の値上がり。これは人件費(刺繍職人)と生地の値上がりによるものが主だ。劇照店の乱立。これもオリンピックに来る観光客目当てらしく京劇メイクを教える教室(メイクアップ学校)が出来て即席の劇照店?が出来るらしい。問題は京劇を良く知らない人間がビジネスとして京劇をチョイスして歪んだ京劇感を素人(観光客)に刷り込むことだね。


劇装街でお店を営んでいた人達もどうするんだろう?1、2軒の店では集客能力も落ちるし「ここでなら京劇の全てが揃う!」が売りの劇装街が無くなるのはマジで痛い。常宿(新北緯飯店)から近くて歩いて行けるなど少しは慣れてきたんだけど残念だなあ。


心配はオーダーしている衣装がちゃんと届くか?それが一番なんですけどね(苦笑)