蛾衣の京劇衣箱 -11ページ目

劇照同盟

白蛇と青蛇1 白蛇と青蛇2 固苦しい名前ですが劇照が好きな人なら本人の意思で名乗れる幽霊団体だ。(笑)

まあ、北京に行って劇照好きな面々が勝手に作ったんで同盟と言っても活動自体はありません。

でも、個々の活動は結構激しく時としてハードな集団になるんです。


全てにおいて劇照が1番となり昼食を抜くのは当たり前、予定は未定で気力体力の限界に挑戦するわ一度の滞在で4箇所での劇照敢行などおよそ観光とは程遠い京劇命の武士(もののふ)が名乗る同盟。(爆笑)


誰かが問う「何故、北京まで劇照しに行くのか?」彼らは答える「そこに衣装があるからだ」京劇には沢山の演目があり色々な役柄があり色々な衣装を身にまとい演じる。

劇照もお店のレベルによって化粧、衣装が違うしカメラマンの腕の差もある。モデルは同じで役柄も同じでも出来栄えは違うものになる。


私はナルちゃんであるから(恥)自分を美しく撮られたい!美しい筈だ!と勘違いしているので写真の出来が悪いと当然のように腕が悪いとお店を非難する。早い話特殊技術を持った店を探してるのさ。(笑)

こんなオイラでも綺麗に写してくれる店は綺麗な人は更に綺麗に写してくれると言う訳であっと言う間に同盟者に情報は駆け抜ける。げに恐ろしき集団なり。


そんな劇照同盟の盟主様(オイラが勝手に命名)は男装の麗人で覇王まで演じるツワモノだが劇照でも右に出るものはおらず新しいお店を探す名人でもある。私が同行する時は何から何までお任せしちゃう姉御肌のお方。まったく女にしておくのが惜しい人だ。(笑)


そんな盟主さまと去年北京でご一緒した際に彼女は青蛇もやった。私は持参した衣装で白蛇を写した。

「よろしかったら一緒に撮りませんか?」う、嬉しい!!実は言いたかったけど折角の劇照を邪魔しちゃ悪いと思って言えなかったのだ。で、念願の舞台の場面再現劇照写真を撮れた。


とても良い経験でしたし楽しい時間でした。写真が出来上がるまでは、、、見事撃沈!

比べて見るといけてるね!じゃなくて己の顔がデカイ!(号泣)遠近法を無視した写真だ!

それに京劇の基礎がある者と無い者の差も歴然です。傾く白素貞!1日沈んでました。(苦笑)

180度

今年2月に知り合いが舞台で覇王を演じた。京劇を習いその集大成として発表会に出演2幕に渡り違う演技者と覇王別姫を演じた。普通であれば2幕も大変だったね。で終わる話だが覇王になったのは女性である。

それも柳の様に細く身長こそ165センチぐらいだが手足の小さい大人の女性である。


実際の彼女は良く気が付き他人の世話を買って出るような姉御肌で覇王とは似ても似つかない美人である。また、劇照の大家でもありお店の衣装を全部制覇するようなエネルギーの持ち主でもある。


そんな彼女の舞台を観た時私は感動を覚えた。自分でも普段とは違う女形で劇照をやるから別の性を演じることの大変さがわかるのである。

しかも只の男役では無い。国を統一せんと戦う項羽の覇王役なのだ。胸を張り肩を怒らせ威厳に満ちた姿や苦悩する背中、敵に囲まれ絶望的状況に追い込まれる悲運の将を普通の女性が演じることは並大抵の努力では無いと思う。虞姫を演じる女性、項羽を演じる男性は居るだろうが項羽を演じた女性は彼女だけだと思う。


友人から北京で京劇(女形)を学ぶ若者の話を聞いた。京劇を学ぶだけでも大変なのに更に180度違う男旦を学んでいると言う。本場中国でも消え行く男旦を日本の若者が受け継ごうと頑張ってることに感動を覚える。そんな彼女、彼って格好良いと思いませんか?オイラも頑張るべえ!

蛾衣の野望

楊貴妃5 今、私の1番やりたいことは虞姫の剣舞を習うこと。何時の日か舞台で踊れたらなあ、、、なんて思ってます。別に観客が居ようが居まいが気にならない。スポットライトを浴びて流れる夜深汎に乗って虞姫の思いを表現出来たらもう最高だろうなあ。


でも、北海道では習う場所も無い。独学で学べるほど甘いものでもない。基礎も経験も無い私が簡単に出来るものでもないけどだから挑戦してみたい。無理は承知で女形をやってる以上は屁理屈を並べて逃げるのは卑怯だしさ。


少しでも京劇が出来れば劇照にも良い結果(ポーズの姿勢)が出るだろうし木偶の棒からの卒業もしなくては頑張ってる友達に笑われちゃうもんなあ。って言うか彼女達を見てるとオイラも頑張らにゃあって気になるのよ。チャンさんも言ってたけど女性の方が根性が座ってるらしく日本では圧倒的に京劇を学ぶのは女性が多いそうだ。


取り敢えずは体力作りと柔軟性が課題なんでその辺から改善してみますかね。でも、去年も同じ事を言ってたきがするなあ?(苦笑)


衣装の色

劇照あか 気が付けば5月も半ばを過ぎてしまいさっぱり更新してませんでした。(恥)

最近は京劇鑑賞にも行けず北京も遠く家でモンモンとしているので書くことも少なくてねえ。


京劇の衣装には色々と取り決めがあるらしく素人の私には戸惑うことばかりでした。

元々、京劇に関して素人なんで知識も無いくせに1枚の画像を見た感覚で衣装を作ってましたからそれに関わったチャンさんは大変だったろうなあと思います。


虞姫の衣装の次に白素貞の衣装を作ることにした。映画「さらばわが愛」のたった1枚の写真。映画の中でも無かったシーンだったけどそれを着たレスリーがとても綺麗だったので決めた。(ここが勘違い)

私「こんどこの衣装を作りたいんですけどこれはどんな芝居なんすか?」チ「これは白蛇伝と言う芝居で断橋と言う場面の衣装ですね」まずはこんな風に話が始まるんですわ。

私「本には女打腰包ー表示染病ってあるんすけど?」チ「病気の時に着る服で白蛇は妊婦なんでお腹を冷やさない目的ですね」(次の衣装は妊婦服かよ?)


うーん、綺麗だと思ってたのは背景がまったく判らなかったからなんだねえ。知らないと言う事は無敵ですな。(苦笑)日本と中国では色に対する感覚が違うのだね。日本では花嫁は白が相場だが中国では赤なんだね。葬式も日本は黒、中国映画では白だしね。


まあ、実際に舞台で使うもんじゃないから自分の好きにしても良い(配色、刺繍)なんですけどあんまり好き勝手に作るとバランスが崩れるから気をつけたいですけどね。この辺が難しいのだね。どうやってオリジナリティを出し雰囲気を壊さないかが問題だね。センスの良し悪しってことかな?

男旦の美学

男旦 ゴールデンウィークなのに何処にも行かず家でゴロゴロしてこんなつまらないブログを読んでくれている貴方に「愛」を感じる敦蛾衣です。(笑)類は友を呼ぶ?


ご存知の方もおられるかと思いますが歌舞伎は男の世界で現在も女役は女形が演じます。京劇も昔は同じでしたが文化大革命以降男は男役、女は女役となり男旦(女形)は衰退して行ったそうです。あくまでも私感ですけど女形が演じる方が妙に色っぽいと思うのです。こじつけですけどお酒を飲まない役者さんは酔っ払い役が上手です。理由は酔っ払いをじっくり観察してるから(笑)当事者(酔っ払い)は酔ってるんで判らないですからね。


女性は長年おんなをやってますから(当たり前)全ての動作が無意識に女性としての動きをしてる。でも考えてみると役者は演じるのですから自然じゃあ演技じゃ無いですよね。初めて京劇のVCDを見たのが梅蘭芳師の「覇王別姫」で次に同じ演目のVCDを弟子の杜近芳師主演で見ました。時代も違うし作りも違うのですけど決定的な違いは男旦と女旦の違いでした。


悲しみを内に秘め優雅に舞踊る梅蘭芳、女の情念を激しく昂ぶらせ力強く舞う杜近芳、囁くように唄う梅蘭芳、悲しみを吼えるように叫ぶ杜近芳、時代によって女性観は変わりますしどちらが素晴らしいかは好みによって分かれると思いますが前者は古い時代の女性で耐える事が美徳だった、後者は頚木から解き放たれた女性本来の姿なのかも知れません。


今日の画像は今年の3月に北京で豫劇「大祭木+庄」に出演していた私の見た初生男旦の連徳志さんです。電光掲示板で男旦と表示されるまで気が付きませんでした。美しいですね。そうそう言うのを忘れてましたけど画像はクリックすると大きくなるので興味のある方はクリックしてね。

戯言その2

刺繍1スカート 来年勤続30年なんだけど早い話が歳を食ったってこと。で、目も老眼、髪の毛は薄い、皮膚は弛む、記憶は薄れる、身体は動かぬと色々と実感する今日この頃。

定年まで勤めると後12年なんだがその後が見えない。何をすれば良いのか?気が付けばオヤジからジジイになるだけなんだな。そんな人生も悲しいので早目にリタイヤして元気がある内に何かやりたいと思うのだ。

じゃあ何をやる?と考えるがまずは語学からだな。英語と北京語は是非習得したい。簡単な英語は何とか喋れるが北京語となると全然アカン!4度も北京に行ったのにさっぱり駄目。完璧に小判鮫と化してる自分に多少は嫌気もさしてる。この点では完全に女性陣に負けてるなあ。見習わなくてはと思っても行動がついていかぬ。

しかし、現状では北京語を習うところも無い田舎住まい故習得もままならない。なれば語学留学と言う手があると教えてくれる人もいる。出来るなら北京に留学したいね。京劇も見れるし食べ物もまあ口に合うし物価も安いしね。問題は治安とかだがこれは日本でも大差ないか?

で、北京語が話せるようになり京劇を勉強して自力で衣装をオーダーするのが夢なのさ。


今日の画像はスカートの前面に施された白鳳凰の刺繍です。マンパオを上に着ると殆ど隠れて見えないんですけどこんなに綺麗に前後刺繍が入ってるんです。見えないのに何故そこまでするの?と思うでしょうけどそれが拘り!コダワリなんですよ。(笑)

戯言その1

虞姫マント 小さな劇団が出来るほど衣装を集めてますけど(現在20着)この先どうするかは判らない。

お金があれば博物館でも作って衣装を展示したいなあなんて思いますが宝くじでも当たらない限り無理。


次に考えたのは中国茶の喫茶店を作ってそこで衣装をディスプレイすると言うもの。これは自宅を改造するだけで金銭面ではクリアするんだけど田舎なんでお客が来ない。生活出来なきゃ意味無いもんね。


まあ、商人でも無いんでお金儲けには向いて無いから失敗は目に見えてるなあ。(苦笑)3年もてば良い方だと思うけど食べて行ければなんて甘いことを考えてる。でも好きな事をして生きて行くのって大変なんだよね。サラリーマンなら妥協も簡単だけど好きなことには妥協出来ない。人生はままならぬ。


これで京劇がメジャーでファンが大勢居たら辺境の地でも多少は暮らしていけるかもね。店内にはモニターで京劇のVCDを流してBGMは北京で仕入れたCDでさ、勿論壁には京劇の衣装が展示されてお客様の目を楽しませる。京劇好きの劇迷が集まる隠れ家にしたいんですけどこんな田舎まで誰が来る?


今日の画像は虞姫のマントの刺繍です。映画「さらば我が愛、覇王別姫」で主人公の蝶衣が小四に役を奪われて呆然とするその肩に菊仙からそっと掛けられるマント。「ありがとう姉さん」そう言うと肩からマントを落とし歩き去る蝶衣。格好良かったです。実際の京劇でもマントを羽織る役で有名なのは虞姫と王昭君ぐらいしか知りませんけどどちらも素敵な衣装ですね。

京劇の華 衣装の刺繍

刺繍3マンパオ 今日は刺繍の話。

京劇で必ず話題に上るのは豪華絢爛な衣装です。原色を使い「これでもか!」と言う感じで刺繍が施されてます。最高級なものなれば本来見えない部分にまで刺繍が施されてます。理由は動きが激しい演技で衣装が捲くれた時でも寂しく無いようにお客さんを楽しませる為と聞いてます。


昔は小さい小屋で演じていたので刺繍も細かく施されていたそうですが段々と大きな舞台で演じるに連れて遠目からも見えるように大きめな刺繍になって来たそうです。


基本的には男性は龍、女性は鳳凰です。他に牡丹や菊、梅の花が咲き乱れ蝶が乱舞したり雲が流れると言う感じで1着の衣装に物語を描くように刺繍が施されてます。


去年北京で刺繍工房へ見学に行きまして下は10歳前後から上は40歳ぐらいまでの女性が思ったより暗い作業所で黙々と手で刺繍を施していました。また機械刺繍は古いミシンで女性達が経験を頼りに凄いスピードで下書きに見事に糸を綴って行きます。どちらも見事なものでした。


画像は梅蘭芳師の改良マンパオ(レプリカ)の刺繍を拡大したものでちょっと漫画チックな鳳凰が刺繍されてますけど細部に渡り見事な刺繍が施されてます。

私を助けてくれる人達

現在は京劇衣装コレクターなんて偉そうなことを言ってますけど1年前は右も左も判らないズブの素人でした。そんな私を助けてくれた人達を紹介しましょう。


まずは日本京劇愛好者の肝っ玉母さんとも言うべき「十河都」さま。

この方を語らずして私の京劇は始まらないです。まったく面識も無い私にチャン・チンホイ氏を紹介してくれたのも彼女ですし十河様のHPが無ければ今の私は無いと断言できますね。(感謝)

彼女の行動力、懐の広さ、努力には本当に頭が下がります。


次は我が軍師「チャン・チンホイ」氏で彼と出会わなければ普通の劇迷にもなったかどうか怪しいところです。私のコレクションもチャン氏の協力無しでは1着も出来なかったです。拘りの1着を作りたいのなら是非チャン氏にご相談なさるのが一番確実な選択ですよ。


そして北京マスターとも言えるのが歌姫ローレライこと「ざおざお」さん。京劇に造詣が深く彼女には2度も北京滞在中にお世話になりました。私の劇照道?を導いてくれた人でもあります。


それから東京での活動をサポートしてくれる盟友「猫耳」さん。彼女が居ないと絶対迷子になっちゃいます。日本京劇界に顔が広く色々な人に紹介してくれる素敵な人です。


他にも劇照同盟のmaoru大王さまやAYAKOさん戯曲学院で京劇を学ぶMUMUさんなど大勢の方が私の京劇を支えてくれるのです。


そして目には見えませんけど京劇の神様が友人達を遣わして私に「精進せい!」とハッパを掛けてくれるのです。

衣装の保管

京劇の衣装って豪華で綺麗ですよね。シルクの生地に金糸銀糸を贅沢に使った刺繍。眺めているだけでも幸せな気分に浸れるのですが保管や手入れが大変です。

 

これからお話しすることは全て恩師であるチャン・チンホイ氏からの受け売りです。京劇の衣装でやってはいけないことがあります。クリーニングはNG!つまり汚れたらそのまんまってこってす。理由は生地が詰めていない絹だからクリーニングすると縮んでしまうそうな。

 

汚れは強烈な照明で見えないそうですが汗の臭いは消せません。そこで昔は焼酎を吹き掛けアルコールで汗を飛ばしたそうです。昔の知恵でしょうけどロマンチックなお話ですね。

 

当初は衣装コレクションをクローゼットに吊るそうかと思ってましたけどこれも衣装が伸びてしまうので駄目だそうです。見た目よりは重いですから自重で肩が抜けたりするのも嫌なんで畳んで箪笥に入れてます。

 

あ、あと生地が絹なんで虫除けはしっかりと施さないと大切な衣装が虫食いになるそうなんで注意してます。

 

チャンさん曰く「衣装は消耗品」そうなんですけど汚したくないなあ。でも自分の衣装で劇照したりパーティでお披露目したいし大勢の人に見せたいしと矛盾した自分が居ます。(苦笑)