蛾衣の京劇衣箱 -5ページ目

劇照一家北京珍道中番外編1

さて、今回も楽しく実りの多い北京だったが5度目にも関わらずハプニングやトラブルは起きる。で、一番のトラブルは最終日に起きた。まあ、全ては私の不注意から起こったのだが事の発端は持参したアルバム。


宋先生に見せたくて持って来たのだが文化撮影城の女社長(初対面)が宋先生に挨拶とばかりに現れたのだ。化粧部屋で私のアルバムを見ながら話が盛り上がっていると女社長も覗き込んだ。そのアルバムには過去に撮影城で写した物と某所で写した物と30枚近い枚数が入っていた。


綺麗ねと言っていた女社長の手が止まり某所の劇照写真に釘付けになった。「これは何処で写したものか?教えて欲しい!」前日の天橋でも業者に同じ事を聞かれたのでmaoruさんが「お店との約束で教えられない。」と言うとそれ以上は詮索しなかったがその手にはアルバムがしっかり握られている。


まあ、気になるんだなあ、、くらいにしか思ってなかったが何時までたっても返そうとしない。仕方無いので「返して」と言うと「会議に使うから貸せ」と言う。どうやら返す気がないらしい。客の私物だと言う事を忘れているようで自分達の都合のみを考えてるのだ。一抹の不安はあったが宋先生もいるし事を荒立てるのも大人気ないし、劇照写真もサービスしてくれるかな?と言うスケベ根性もあったのは事実だ。


金曜日に帰国するとmaoruさんが言うとその日に今回の写真と一緒に渡すと女社長が確約したので不安を打ち消しながら撮影城を後にしたが予感は的中した。「写真が抜かれていても判らないよね」maoruさんの言葉にまさか?と思っていたのだがその後届いたアルバムから2枚写真が姿を消していた。勿論その中でも一番のお気に入りの奴だった。


北京在住の知り合いに交渉してもらい無事に郵送してもらうことに話がついたが後味の悪い一件となった。

勿論、期待したサービスは無し。今回学んだことは中国では自分の意思をはっきりと言葉で伝える!と言うこと。日本人的発想(善意には善意を持って接する)は通用しないことが判った。日々勉強ですね。

穆桂英5 黄皇5 白蛇5

今日の画像は今回の旅で秘密の某所(笑)での劇照写真です。やっぱり違うよね。

スキャナ導入

今まではプリント写真をデジカメで撮影してPCに取り込んでいたのだがどうも気に入らんかった。歪は出るし反射やらピントの甘さで満足な取り込みが出来なかった。それでスキャナを買おうと前から思っていたのだが踏ん切りがつかなくて買わなかった。


それにPC関係機器って直ぐに新製品が性能アップして低価格で販売されるので躊躇しちゃうんだ。何処かで決断せねば何時までも買えないこのジレンマ。で、今回北京に行くのを期に購入を決定したのだがデジタル世代とは違った生まれなんで結局使わずじまいで北京に出発。(苦笑)何の為に買ったのかねえ。


これではイカン!!と意を決してセッティング。スペース確保など何だかんだで2日間も掛かってやっと一部を取り込みましたので御覧下さい。従来の画像よりはマシだと思うがモデルが変らないのとカメラマンがヘボだったのでこんな不出来になりました。宋先生御免なさい。

虞姫そう2

楊貴妃そう

鉄鏡公主そう

見事なくらい全部馬面ですわい。(涙)責任者出てこ~い!!ってモデルが悪いのは棚上げする(爆)

劇照一家北京珍道中7

レスリー・チャンの映画「さらば わが愛 覇王別姫」を観て衝撃を受け京劇の世界に足を踏み入れた私だが何時かはその時レスリーをメイクした宋小川師にメイクして貰うのが夢だった。しかし、どこの世界に素人の日本人(しかもオヤジ)にメイクしてくれる有名人が居るだろうか?だが、私の目の前にはその当人が居て丁寧に慎重にメイクをしてくれている。

宋先生3


それは幻でも無く夢でも無いことは目を開けると実感出来た。顔一面にドウランや粉白粉を着ける時に目を瞑る。そして合図があると目を開けるのだが目の前に宋小川師の真剣で厳しい眼差しがある。私の頬や顔に彼の手の温もりが伝わる。レスリーもこの温もりを感じていたのだろうか?レスリーと比べること自体恐れ多いことだが思わずにはいられない。


前記の小娘が2役こなす間も私のメイクは終わらない。目を瞑った私の意識が2度ほど飛んだのは秘密だ。(笑)それほど気分が良かったと推察頂きたい。美形とは言いがたい私を美しく仕上げるのに苦戦している宋先生。レスリーは元々綺麗な顔立ちだったとも先生は謙遜して言っていたがある意味真実だろう。そのレスリーをより美しく仕上げた腕も奮いがいが無かったでしょう。すいません。


でも、私は非常に満足していた。小娘の嫉妬を帯びた眼差し、中国青年の宋先生を見詰める尊敬と憧れの眼差し、それを受ける宋先生を私が独占していたのだから。そしてこの日の為に持参した衣装を身に着けるのも宋先生が手伝ってくれる。梅蘭芳師レプリカで作った虞姫の衣装。小娘が着ているお店のくたびれた衣装とは格が違うのだ。本当ならレスリーが着ていた衣装を再現したかったのだが資料が少なく断念したのだが今度北京に来たら宋先生の手助けを頂き再現出来る見通しも付いたことを付記しておく。

宋先生4


続いて鉄鏡公主の劇照。この衣装は京劇界最後の男旦と言われる温如華師のレプリカで映画でレスリーの声の吹き替えをした国家一級俳優である。その晩の夕食会の会話で宋先生も友人であることが判明。

やはり何かの因縁を感じずにはいられなかった。

宋先生2


そして最後はやっぱり楊貴妃でしょう!とばかりに梅蘭芳師の着ていた衣装を実際に作った劉店主さまに再現して頂いたレプリカの女蠎でフィナーレを飾った。そしてお手伝いを頂いた仲間と記念撮影、勿論宋先生も入って頂き2ショットもお願いしたところ快く引き受けて頂きまた感謝。もう、思い残すことは無い(笑)

2ショット


着替えを終えてメイクを落とす時も宋先生は親切に接してくれ最後まで気を使うところがお人柄の良さを表してますね。そしてお店のPCモニターで画像のチェックにも立ち会ってくれアドバイスを頂きプリントする画像を選んでくれました。単に上辺だけでは無く「これは表情も良いし目に力がある」などと選んだ理由を説明してくれるなど最後までお付き合い下さいました。(感謝)

劇照一家北京珍道中6

それでは今回のメインイベント!宋小川先生を招いての劇照と晩餐会のお話だ。しかし、先生との約束は午後1時からなんで京劇迷の我々が時間を無駄にする訳も無く早朝から中国戯曲学院に向かった。狙いは学院内の売店。そこで京劇関係のVCD、CD、DVDや本をゲットすること。


好みの資料や良い本などは地道に足で探すしか無いのが現状。そうそうチャンスに恵まれるほど甘くないのがマニアの世界。次回に買おう!なんて思ったが最後、次に行けば売り切れているケースが多く後悔してばかりです。で、「見つけたら即購入!」が鉄則なんだな。(笑)


タクシーで学院の前に乗り付けた我々を見詰める警備員を無視して勝手知ったる場所とばかりに売店に向かう3人。(笑)店内に入ると主任のおばちゃんは居ない様子だ。ほぼ貸切状態で店内を物色とばかりに散る我々。お互い趣向が違うので奪い合いは無いのが救い。(苦笑)


今回欲しかったのはDVD。やはりVCDと違って画像も綺麗で音も良い。残念なのは演目の数が少ないことだ。中国ではまだVCDがお手軽な映像媒体なんだね。しかし、そこは私にとっては宝の山で何時間居ても飽きない桃源郷。お目当てのDVDを購入して今日の本命のため後ろ髪を引かれる気持ちで売店を後にした。


一端ホテルに戻り今日の為に持参した衣装を詰めたバッグを担いでいざ出陣じゃ(笑)

時間の節約のため地下鉄を利用しての移動だ。何せ今日は日曜日で北京中心街はお馴染みの交通渋滞でタクシーでの移動は困難と判断したのだ。初対面で遅刻する訳にもイカンからね。


予定通り地下鉄駅を出てタクシーを拾って本日の待ち合わせ場所、文化撮影城に到着。我々は逸る気持ちを抑えるように近くの食堂で昼食を取る。腹が減っては戦は出来ぬ!これは冗談でも無く空きっ腹で劇照すると目に力が無い写真が出来るのよ。(マジで)


腹を満たした我々はいざ鎌倉とばかりに撮影城の扉を開けるとお馴染みのカメラマン張さんとすれ違うが気が付かなかったのか無視されたとママがご立腹。しかし、杜さんは笑顔で迎えてくれた。良かった!気分を悪くしてないらしい。過去4度に渡り私のメイクをしてくれたので今回の件でどんな対応をされるか心配だったんだ。(汗)


さて、宋先生はまだ来て居ないようだ。ようだと言うのもパパもママも宋先生の顔を知らないのだ(笑)

ほどなく娘が「ほら!来たよ」との声に顔を上げるとがっちりした体格の良い男性が一人。その場に居合わせた中国人青年の顔が驚きに変る。宋先生も我々の顔を知らないのでその青年が依頼主?と言う変な雰囲気になった(苦笑)


しかし、直ぐに勘違いと気が付き我々と無事にご対面!ママが宋先生に私が本日のゲストと紹介してくれて一大イベントの幕が今開かれたのだ。見慣れた化粧室に案内されてまずは先制パンチと衣装を取り出す私に宋先生から強烈なカウンターを見舞われた。それがCDと本。これにゃ本当に参ったです。私の心は乙女の状態(爆笑)で興奮して劇照どころじゃなくなった。


プレゼントに感激している私にママが「早くしないと時間が無くなるよ」と活を入れてくれた。おおっ!そうだこんなことをやってる場合ではないぞ。衣装をカバンから出すと撮影城の衣装を押し退けてママが掛けてくれ汚れないように自分の上着で奥にある靴箱を隠してくれた。こんな気遣いが出来るママが大好きです。


見慣れない女性が居ると思ったら彼女はお客さんのようで化粧を始めた。???貸切じゃ無いの??まあ、小娘一人くらいどうってことは無いので先生にメイクを始めてもらうがどうもママの様子がおかしい?

小娘が気になるようだ。原因は直ぐに判明。小娘はこともあろうにママの十八番、覇王項羽のメイクを始めたではないか!こちらは虞姫のメイクから始めたのだ。流石は京劇の神様、粋な計らいだね。

宋先生1


どうにも我慢ならないママは敵情視察とばかりにカメラを娘に預けてスタジオに消えたが安心したのか「大したことは無い」と胸を張っておった。(笑)その気持ちは痛いほど判るよ。オイラも他の人が良い衣装を持ってると聞けばどんな衣装か見たくなるし自分と比べたくなるもんね。


その7へ続く

劇照一家北京珍道中5

劇装街の劉店主さまのお店で買った物。以前からこれが無くては格好がつかないと思っていた物があった。

槍と女太刀。槍は白蛇伝や虹橋贈珠で主人公が足を使った打出手で宙を舞ったり見栄のポーズで重要な小道具なんです。女太刀も穆桂英の扮装には欠かせない小道具。女太刀を構えると気分はもう女将軍で何処からでもかかって来なさい!ってな気分すな(笑)

武器1


剣は青蛇の双剣が増えた。それで全部で3本になった。何が違うか?まず黄色い双剣は言わずと知れた覇王別姫の虞姫が使う物。白は白蛇伝で主人公の白素貞が使う単剣。青は勿論青蛇の双剣。衣装に合わせるのがセオリーなのだ。


以前、論争になった白蛇の剣。発端は白蛇の剣は一本だと私が言ったことに始まる。勿論自分の剣だから一本の物をオーダーした。しかし、双剣では?と言う意見が大勢を占めることに。勿論私も映像を見て確認したので単剣と反論した。しかし、結論は簡単な話で役者によってどちらでも使うとのこと。(笑)

武器2


私が参考にした杜近芳師は単剣で演技していたが他の役者さんは双剣を使っていたのだった。要は好みの違いだったようだ。思い込みが激しいのもいけませんね(苦笑)良く見ると房の長さが違うね。個人的には単剣で房を使った立ち回りが好きですよ。出来ませんけどね(汗)

劇照一家北京珍道中4

今日はちょいと本筋を離れて劇照一家のお話です。

ママは劇照の名手?にて男役を好む男前、娘は武旦専攻で劇照の難ポーズも軽々こなす本格派、パパは京劇劇迷界の異端児で衣装コレクターを自認、国家一級俳優の宋小川先生にも聞いたことが無いと言わしめた折り紙付きの変人である。(笑)


北京では宿泊と朝食以外は行動を共にする即席一家なれど結束は固く妙な連帯感で結ばれている。

それぞれ色々な人生を歩み生きてきて京劇に魅せられて北京に集う仲間である。

上記のごとく京劇と言う共通項で集い劇照をメインに活動するが好みは正反対なので衝突することが無い。


誤解を招くといけないのでおことわりしておくが趣向は至ってノーマルである(笑)パパは旦(青衣)命?で集める衣装も全部女役の物だがニューハーフでもおかまさんでも無い。自他共に認める女好きである。(恥)

ママも男役に絶対の自信を持っている劇照マニアでMy紅団龍蠎を所有するほどの入れ込みようであるが間違ってもレズビアンでは無い。


娘は誤解を受け易いタイプだが人見知りが激しいだけで何事にも一直線な熱いハートと根性(古い?)を持った近頃の若い娘には珍しいタイプ。我が劇照一家では娘が一番のしっかり者で夢中になり暴走気味のママとボケ老人になりつつあるパパを正しい道に導く天使だ。しかも時々ボケも忘れずに咬ましてくれる(笑)優れものでお買い得ですよ!お兄さん!!


去年の北京衣装ツアーで初めて逢った3人でママはパパを胡散臭い人物と思って居た事が判明(苦笑)

まあ、正常な認識だ。女形を選考する中年親父を怪しく思わない人は居ないな(笑)娘に至っては3日間で一言も言葉を交わさずじまいだったしね。(この人怒ってる嫌われてるなと誤認してたよ)


そんな3人が昼夜と食事を共にして一皿のチャーハンや一杯の麺を何の違和感も無く分け合う光景が北京では日常と化していた。自然に各々のポジションが決まり行動するがそこには義務感や強制的な意識はまったく無い。それぞれが出来る事をする。無理をしないから嫌にならない。たとえアクシデントや失敗があってもそれを楽しむ余裕があるから許せてしまう。


この二人の他にも素晴らしい仲間がいるので当分この世界から足を抜きそうにないっすね(笑)





劇照一家北京珍道中3

さて、続きだがどうやら記憶回路が壊れているらしくお昼からの観劇が抜けていたので時間を巻き戻してみる。(笑)

劇照を終えた我々が向かった先は前門老火車站劇場だった。早い話、小判鮫なんでママと娘の後を着いて行くので何処へ行くのか判らんかった。でビルの3階に上がると劇場の入り口があり扉の奥から京劇の

唱が聞こえる。受付の兄ちゃんからパンフを貰うと中に入れと言うので覗くと本番前の練習中と見た。しかもどうやらタダ、無料らしい。ラッキー!!タダで京劇が見れると思わんかった。


何故?パンフには北京青年京劇愛好者倶楽部の文字。そっか!アマチュアの公演なんだ。これなら肩の力を抜いて観劇が出来ると言うものだ。取り合えず食事の為に一度外へ出て空腹を満たし劇場に戻ると結構客が入ってる。中には花束を持った青年の姿も見える。客層も昨日の長安大劇院の観光客と違い出演者の親戚や友人で占められているようだ。


劇は「玉堂春」で言葉が判らないオイラの苦手なタイプの劇だった。(苦笑)それでも旦の衣装が綺麗だったら興味があるんだが地味な女罪衣では瞼が重くなるのは自然の成り行き(笑)それに第一部で主役が男旦で贔屓目に見ても男顔。まあ、タダだし小判鮫なんで文句は言わない。それに事前に娘とママが見たい物を見る約束なんでね。


「あっつ!!大変!」ママの叫びで深い眠りから覚めた。(汗)どうやら今日のメイン劇装街での注文見本をホテルに忘れたらしい。ほんでもってママは退場、娘と二人で再び眠りに就こうとしたが第二部がどうもおかしい?主役が替わったのだが顔が変だ。三遊亭楽太郎そっくりな男性が演じているぞ!会場もざわめいている。オイラの方が綺麗じゃん!(爆)


この楽太郎、どうもいけない。声はまあまあだが歌い出しを間違えたりとその度に会場がざわめく。楽士の兄ちゃんも笑ってる。しかし、ここで救世主が現れた。準主役の裁判官?がヒデロウみたいで動作が妙にオカマチックなのだ。彼が良い味を出し会場が盛り上がる。


しかし、伏兵現る!!娘が耳打ちした「右前方でアベックがイチャついてる」言われた方をみると不自然にめり込む男女のカップル。口元は見えぬが首の角度と接点を想像するとキッスオブファイアーの真っ最中だ。

更に女性は目を閉じて表情はもはや陶酔状態。中国の青年も侮りがたし!!流石13億だ(笑)


劇も観たいがカップルも気になる。京劇とラブシーンが同時に見れるとは思わなかったよ(笑)で、テニスの観客状態で我々の眼は舞台と客席を激しく移動。舞台も負けじと盛り上がるし二人もドンドン盛り上がる。

気が付くとアベックの周りから人が居なくなった。10mくらいの真ん中にアベック、右におばちゃん、左に2人おばちゃん。突然、左のおばちゃんが立ち上がり何かを叫んだ。おっ?遂にアベックの痴態に切れたおばちゃんが乱入か?と思いきや左のおばちゃんに席が空いてるからこっちへ来い!ってな会話だったらしい。

(苦笑)


我々も先ほどまでの眠気も完全に飛び舞台のヒデロウに注目しつつアベックを応援すると言う忙しい状況で最後には7.3でアベックに気を取られてしまった(苦笑)しかし、そこは中国共産党だ。アベックは最後の一線を越えることなく二人で座席にうずくまってしまったので我々は男性の健闘を祈って後ろ髪を引かれながら会場を後にしたのである。


ビルを出てママを待つ我々の会話は当然あのカップルとヒデロウのことだ。ほどなくママが合流するも我々の意味深な会話を理解出来ないママは一人不貞腐れていた。(笑)ごめんね。


お詫びと訂正  珍道中2でママが新しい店を開拓と書きましたが娘が発見、ママが予約の間違えでした。

どうもすいません。

劇照一家北京珍道中2

さあ、2日目の朝だ。北京の空は今日も曇りだが早朝からスケジュールが詰まってる。頑張るぞ!!

今日はママが開拓した新しいお店で劇照だ。毎度の事ながら新しい店は緊張するんだ。一般の観光客向けの劇照(単に京劇役者の扮装して写真を撮る)レベルでは我々の欲望は満足出来ない。安い!上手い!美しいの三拍子揃ったお店を探しているんざます(笑)


しかし、ママの情報収集能力には毎度感心しちゃうよ。遠く日本に居ながら北京の劇照店を探し当てる技は誰にも負けないであろう。これぞ匠の技だな。(爆笑)ワシはひたすら小判鮫。なんせ京劇の海は広くて深いので自力では溺れてしまうのじゃ。


通訳に連れていかれたのは天橋楽茶園。つまり大衆演芸場だね。入ると目の前に広がる空間には湖広会館に似た作りの舞台と客席。うーん、嫌な予感。色々あったけど中身は割愛します。で、良かった事のみ書きますかね。


北京で初めて舞台に上がったよ。勿論客席には誰も居ないし音楽も無し。でも舞台の広さにちょっと感動。これで自分の衣装だったらもっと感動したんだろうけどね。それとお店のおじちゃん。これがとっても良い味を出してるおじちゃんで喋れないオイラの側に来て親指を立てて「ハオ!」と褒めてくれた。ヒョコヒョコと側に来てはお茶を継ぎ足してくれる。お髭がセクシーだ(笑)胡桃を握っているのかコリコリ小さな音を立てたり瓢箪で作ったコオロギ入れを大事に磨いて見せてくれたりと人懐っこい笑顔が印象的でした。また、逢いたいものです。


遅いお昼を食べた我々が向かったのは我が心の故郷劇装街。車窓から見える場違いな黄色いホテル。おおっ!8ヶ月振りに帰ってきたぞ!しかし、タクシーの運ちゃんは100mほど通り過ぎる。まあ、無理もないか?それほどメジャーじゃないもんね。(苦笑)


大通りから狭い路地が劇装街。ここも来る度に変化する。初めて来た時は如何にも中国ってな路地裏だったんだ。汚れた道に洗濯物が風に吹かれてるし荷物を積んだ自転車が行きかい狭いお店が並ぶ通りだった。それが今じゃホテルが出来て向かいの公衆トイレも外観が綺麗になったりと雰囲気が一辺。


でも変らないのはお店の人の笑顔。劉店主さまが満面の笑みで迎えてくれた。若社長もオデコが光ってる(笑)お姉さんも相変わらず。うん?知らないスタッフが一人増えている。で、店内に入ると猫耳さまご夫妻が待っていた。そこに劇照一家が乗り込んだもんだから店内は一気に狭くなる。(笑)


それからが大変!!パパは新しい衣装のオーダー、ママは刺繍の発注、娘は劇団の衣装受け取りと3人が一斉に動き出したからもう大混乱。そこへチャンさんが日本から電話で通訳をしてくれる。狭い店内で入れ替わり立ち代り電話に出て状況と希望を説明、そして劉店主さまが電話に出る、その間でも若社長とオーダーの話、我々一家3人プラス劉店主、若社長、チャンさんと話が錯綜しグチャグチャ!!


猫耳さまのご主人に助けて貰いつつオーダー終了。若社長が出して来た白い女蟒がとても素敵だったので即ゲット(笑)初めて見る型だったので我慢出来ませんでした。(恥)その他に鳳凰女蟒をオーダー。これはどうやら葬式の場面で着るものらしいがオイラは役者じゃないのでアレンジしてシックな色の鳳凰を天然色に換えて作ることに。それと万字錦地女蟒も作った。


だが今回の一番の目的はリンズ、翎子でやんす!前回一組手に入れたんだけど根元の色違いがどうしても欲しくなって良いリンズを頼んだのだ。「高いですよ~」とチャンさんに聞いていたけどマジで高かった(涙)

二組で3000元だったよ。(汗)刺繍をした腰包(スカート)が1枚1500元だから一組のリンズと同じお値段だ。


娘も練習用のmyリンズが欲しいと言い出してご購入!で、お値段は400元。何処が違うんだ?娘曰く「パパのリンズは長くて太い厳選されたものなので高い」知らなかったよ。娘のお師匠さんもリンズを塩ビパイプに入れて大事に保管してるそうだ。そう言えば劇照店でも大切そうに筒に入れて保管してたなあ。オイラは剥き出しで部屋に吊るしてる。(汗)帰ったら大事にするべ。


他にも槍と女太刀、青蛇の双剣と荷物が増えた私はオーダーが終わり店を出て一端ホテルに戻ることを提案。まあ、この格好では荷物が邪魔でゆっくり晩飯も食えない。それに明日は最大のイベントが待ってるから今夜はゆっくりしようと一家で意見が一致。ホテルの側で食事することにした。


明日に続く。



劇照一家(偽)北京珍道中その1

はい、今日から始まるこのシリーズ。登場人物はパパ(敦蛾衣)ママ(maoru)娘(AYAKO)の3人。この即席家族が繰り広げる北京珍道中の物語。勿論、この偽家族は傍から見ればの話で実態は京劇迷で劇照命の繋がりと言うことをお二人の名誉のために敢えて説明しておく。誤解無きように。


さて、先発隊の二人に遅れること2日目、私の泊ったホテル宝辰飯店にお二人がお迎えに来てくれる手筈。

まずはフロントで両替じゃ。ところが兄ちゃんそんなに多くは駄目だとぬかす。前回の新北緯飯店じゃそんなことは言わなかったぞ!仕方なく1万円だけ両替。これじゃあ今日の劇照代にもならん。まあ、前回の余りがあったんで我慢するか。


今日の劇照は秘密の所で某撮影城のように商業化されるのが嫌なので公開はしません。(笑)でも腕は今までで最高と思ってます。そこに我が一家が一人3役で乗り込むのだから時間が掛かることは必須だ。

なので集合は朝の8時半、ロビーでタバコを吹かしてると娘が走ってくる(笑)久しぶりじゃん我が子よ!


タクシーにはママも乗ってる。(当たり前)それ行け!とばかりに乗り込み一路お店へ。近くでタクシーを降り懐かしい町並みがお出迎え。これで2度目だもんね。で、ビルの2階へと向かうがどうも様子が変だ。1階が食堂になってる!一度入るも階段の上は更に食堂の入り口が、、、ありゃりゃ??ここ北京じゃ2ヶ月もあれば町並みがガラリと変ることは当たり前。一度外へ出て確認するも間違え無い、このビルだ。で、食堂を横切り再度2階へ上がる。通路の劇照パネルが我々の記憶力を証明してくれた。無事、到着。


挨拶もそこそこにまずは劇照する役柄をチョイス。これで今日の衣装が決まるので念入りに3人が選ぶ。

が、私は制約(身長)があるんで一番早く決定。で、先陣を切るごとくメイク開始!この日の為にしまむらで買った黒のTシャツ姿になる。持参したズボンを履こうとしたが写らないから要らないとのこと。ガッカリ。(苦笑)

まあ、確かに写真には写らないけどさ。拘りなんすよ。気合の問題でね。


メイクが始まり懐かしい顔が出来上がる。何処かで見た顔。個性派で性別不明の美輪某に似てる。思わず「もののけ姫」のモロの声を真似る「お前にサンが救えるか?」娘に大うけ!!悪乗りか?マニアックかも?

で、今回も手の型が決まらない(涙)それにデカイ!なので水袖で隠す画像が多くなる。規格外に生んだ親が憎い(笑)


そうこうしてる内に私は3役の劇照が終了。メイクを落として午後に備えて隣接する食堂で腹ごしらえを済ます。ぬるいコーラ(苦笑)で喉の渇きを潤した我々は両替するために一端外へ。ママと娘が泊ったホテルでは両替出来なかったそうだ。大通りに出て迷わず左折。しかし行けども行けども銀行の看板が見あたら無い。諦めて戻り最初の場所で右を見るとなんと銀行の文字。人生こんなもんです(苦笑)


まずはママが両替、時間が無いのでパパと娘を置いて劇照店に走る。娘がプリプリして戻って来た。「何度も用紙に記入させられた!」それが中国なのだ。我々は異邦人なのだよ。などと悟ったような台詞は思っても言わない。(笑)


戻るとママは劇照の真っ最中。で、パパも御返しとばかりにメイク中の姿を激写!この日の為に買ったデジカメを使う。うーん、モニターを見ながら写せるのって良いねえ。前のデジカメは直ぐにバッテリー切れになるんで使えなかった。当時は高かった12万円もしたのに今じゃ3万円ちょいで500万画素だもんね。技術は日進月歩でんな。流石ジャパニーズテクノロジーじゃ。


ママの劇照も無事終わり娘の番だ。しかしここで問題発生。時刻は午後4時。7時から長安大劇院で観劇する予定なのだ。だがここで時間がどうのこうの言うと良い写真は撮れないのを身に沁みて判ってる我々は敢えて口を閉じる。観劇と劇照を秤に掛けると劇照が重たい性格なのだ。(笑)


で、娘は虞姫をやったので舞台を再現するべく剣舞のクライマックス「海老反り」をリクエストしたりとお店側もノリノリで撮影。パパにゃ死んでも真似が出来ないと己の不甲斐なさを実感する日でもあった。全員の撮影が終了しお店を後にしたのが午後7時。演目は「覇王別姫」「秋江」「盗庫銀」の3本立て。「もしかしたら演目の順番が変って覇王別姫が最後かも?」と淡い期待をするも会場に入ると「秋江」の終わり頃。


まあ、安いチケットだったし「覇王別姫」は見てるからそれ程ガッカリはしなかった。それより終了後ロビーで京劇グッズ販売コーナーがありそこでDVDを2枚購入したんだけど売り子の姉さんの対応に改めて中国を思い知る結果となった。良くも悪くも中国ですな。  


ってな訳で初日はここまで。お疲れさまでした。

宝物

北京で宋小川先生にお会いしメイクをして貰い、劇照の指導まで受けその夜の晩餐会で色々なお話を聞いて楽しい一時を過ごした。宋先生は非常に気さくな方で私のような素人にも親切、丁寧に接してくれ一流の役者さんはファンを大事にするんだと感心することしきり。

レスリー


そんな宋先生がくれたものがある。今は無きレスリー・チャンの特集記事が載った本と先生のCD。

CDには無理を言ってサインをして頂いた。本には先生の写した京劇姿のレスリーが一杯載っている。

どちらも大事な宝物になった。本当に感謝である。

宋小川


宋先生に唱はやらないのか?と聞かれ恥ずかしながら先生と仲間の前でほんの少し声を出す。勿論裏声で。料理屋の個室だから大きな声は出せないので押さえて声を出す。素質があると褒められた。(照)

まあ、リップサービスですけど嬉しいもんです。先生の声はとても綺麗でこれぞ京劇役者と言う顔に甘い声。天は二物を与えるんだな。オイラにゃ一物も無いけどさ(苦笑)